「八丁紙」を付けて完成。「七五三」は水神様(台所、洗面所、風呂、トイレ)に飾り、棒締めは玄関、床の間に飾る。

新潟県では正月の習俗として、現在でも八丁紙を飾っています。
八丁紙は神棚や、鏡餅をのせた三方の前に飾る前垂れ紙と、もう一種類、
神棚および家の人口の左右に飾った松の小枝から下げる、下げ紙があります。
この二種類を総称して、八丁紙と呼んでおります。「ハッチョウガミ」の語源はわかりません。
我が国では、「清浄な白紙に神・仏が宿る」と、昔から考えられてきました。
神棚の御弊、相撲の横綱の綱の下げ紙などが、その代表的なものですが、
八丁紙もそんな考え方から始まったといわれております。
この習俗は、高野山で始まった切り紙「宝来」がそのもとであり、
全国的に遊行した「高野聖」の回国布教にともなって、
日本各地に流布し、それがもとになって、八丁紙のような神棚飾りに発展し定着したものと考えられます。
前垂紙は、白紙一枚が使用されます。そこへ恵比須・大黒・松竹梅・宝船・鯛・吉祥文字などの切り透かしを入れます。
大雪の降る雪国の昔の暮らしは、温暖な地方の方々にはわからぬ酷しさがありました。
除雪融雪の機器のない時代、長い冬を過ごさねばならなかった越後の人々にとって、
春を迎える喜びは無上のものであり、正月はその先ぶれでありました。
いろりの煤で黒ずんだ部屋に、その年の豊作や大漁の願いを込めて、
縁起絵やめでたい文字を彫った白紙を飾り、一家が団らんしていた様子が目に浮かぶようです。
全国的には、ほとんど無くなってしまった、といわれる正月行事を、現在も連綿として継承している越後の人々の心の奥には、
この様な祖先の喜びが無意識のうちに伝っているのかも知れません。

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